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2010年度 活動方針
2010年3月厚生労働省は全国のホームレス数を13,124人と発表した。これは、前年に比べ約2,600人以上の減少であり、国が2003年に行った最初のホームレス全国調査から約12,000人の減少となる。
ほとんどの地域で行政機関が目視で行っている調査である故にどれほど正確な数値であるかは検証すべきではあるが、総体として野宿状態にある人々の人数が減少していることは各現場においても実感しているところである。
しかし、この数値が示すように本当に日本のホームレス問題及び困窮者問題は解決に向かっていると言えるのだろうか。この間のホームレス者を取り巻く状況についていくつかの視点を提示したい。
第一に生活保護を巡る環境が大きく変わったことがあげられる。2008年9月以降の状況の中で押し切られるように生活保護の入り口が開いた。「住所不定者の保護申請は認めない」という状況から「路上からの申請を認める」窓口が登場した。ワンストップサービスに象徴される、労働行政と保護行政を一体的に運用しようとする試みも始まり、生活保護が多くの困窮者の受け皿として機能し始めた。
ただ被保護者の数を見ると1995年約89万人が2010年1月時点で183万人となっている。すなわち困窮者は確実に増加している。確かに野宿状態にまで陥る人、またその状態が長く続いている人は減少していると見られるが、保護申請は爆発的に増加している。
「ホームレス自立支援法」において想定されている「ホームレス」は、「路上生活者」と限定されていたため(理念的には『おそれのある者』があるが)今日の状況では「自立支援法」がカバーする「ホームレス施策」だけでは困窮者総体を捉えることが困難な事態となっていると言える。生活保護に謳われている無差別平等の原則や、自立の助長という目的が実行されようとしていることは保護行政が一歩前進した証しであるが、一方で生活保護受給をもって困窮者の抱える問題がすべて解決できるわけではないのも事実である。今後、困窮者の多様化の中、あるべき支援は何かという新たな問いが生まれている。
経済扶助に特化した生活保護がカバーできる部分は限られている。住居の設置や保証人の確保、就労支援、地域での生活を安定的に営むためのケアーなど課題は山積している。これらの課題を全国ネットとしてはどのように受け止め、支援するのかが問われている。
第二に今回の国の調査は目視調査である故に、年齢や当事者の困窮状況については把握できていない。2008年夏の自立支援法5年の折り返し点における基本方針見直し時に注目されたことは「高齢化・長期化」であった。高齢ホームレスの存在、野宿が長期化し意欲低下なども重なり自立支援に踏み出せない方々がおられることは今でも現実である。しかし一方でその後の派遣切り等の事態が起こり、大量の若年困窮者が現れた。このことはこれまでの支援の在り方に大きく変更を迫るものである。就労支援にしても、これまでは50代の方々に5年~10年の範疇での再就職を支援したが、20代、30代の人々には40年、30年の就労期間を想定しての支援となる。若年層に対する取り組みを全国ネットとしてはどのように行うのか。
ちなみに生活保護については、1995年その他世帯(若年単身稼働層)が42,000世帯であったが、2010年1月時点で191,000世帯、360%の増加となっている。
第三に「ホームレス=野宿者」として捉えられてきた国の施策であったが、自立支援法から8年が経過しようとしている今日「ホームレス状態におかれた人々の実情」についての様々な現場からの報告が見受けられるようになった。
池袋の「てのはし」が調査された「路上生活者6割精神疾患」や北九州ホームレス支援機構の報告「自立支援センター入所者6割が療育手帳等取得」、また高齢者やその他障害を持つ人々の存在が明らかになってきた。
このように当事者の抱える問題が野宿状態のみならず、複合的な問題を抱えている実態が多く報告されている。高齢者、障害、精神疾患、依存症、多重債務、自殺、家庭問題、貧困の世代間連鎖など様々で複合的な問題に対処しなければならない。
2012年の時限立法の期限を前に「ホームレスとは誰だったのか」について明らかにするための調査を行いたい。この調査に関しては、現在厚生労働省に対して実施に関する調整を行っている。路上調査のみならず、これまで支援を行った方々に対して、調査を行い、実態を明らかにした上で支援のあるべき形を国に提示できればと思う。いわばこの「可視化調査」を実施することによって、これまで就労偏重と言われた国の施策を問いなおし、今後のホームレス支援に関する国及び民間の支援体制を模索したい。
第四に昨年は自立支援施設の在り方に関する議論が政府を中心に行われた。現在第二種事業所を含む「抱き合わせ事業(居宅と食事とケアなどを同時に提供する施設)」に対する規制法案が議論されている。いわゆる「貧困ビジネス対策」として出されようとしている議員立法である。ただ「規制」が先行している現状もあり、このままでは自立支援を行ってきた事業所まで事業が成り立たなくなる可能性さえ見受けられる。生活保護行政の実態を含めなぜ「貧困ビジネス」と言われるものが登場したのか。では、どのような受け皿やシステムが必要とされているのか。そこにおける国の責任と支援団体のなすべきことなど、整備されなければならない課題は山積である。
「無低施設」に関しては、従来「困窮者に対する居宅提供」(食事さえ前提となっていない)のみの施策であったが、現状では野宿状態の人々がもう一度生活を取り戻すために様々な支援を行ってきた。「無低は、無低に留まりケアが必要な者は一種施設へ」という考えがあるが、「措置から契約へ」という福祉の流れもあり「支援付住宅」という新たな枠組み(いわば1.5種)の必要が迫られていると言える。生活保護費のみによる事業運営自体を見直し、国があるべき支援の必要を認めた上で支援する仕組みが必要である。
全国ネットとしては支援付きのハウジングプランを提示し、今後の困窮者支援の枠組みを提示したいと考える。そのために規制法案に対して意見表明を行い同時にあるべき支援施設・住宅に対する国からの補助等に関しても提言を行いたい。
第五にホームレスから脱し地域生活を始められた人々に対する継続支援のシステムの構築はかねてから求められてきた。すでに各地で行われている自立支援に付随するアフターケアーについては、その多くが無償のボランタリーな活動によって担われてきた。自立者の増大、専門的ケアーの必要性など、アフターケアーによる地域生活の維持がホームレス支援の大きな課題となっている。
全国ネットとしては、昨年行った「地域生活安定化調査事業」によって継続ケアーの必然を確認した。本年はこの事業を実働したい。
第六に「困窮概念」が問われている。これまでの困窮概念は、基本的に「経済的困窮」と「身体的困窮」であった。それにしたがって様々な社会的施策が取られてきた。
しかし、「無縁社会」と呼ばれる今日、第三の困窮概念が国の施策にも上りつつある。それは「関係の困窮」である。私たちは、野宿状態が単なるハウスレス(経済的物理的困窮)ではなく、ホームレス(関係的困窮)であることを見てきた。従来家族などによって支えられてきた部分が家族の崩壊と共に欠落し、それが自立の大きな妨げにもなってきた。この失われた「絆」をどのようにとりもどすのか。民間の支援活動の在り方や国の政策においてもこのことが大きなテーマとなっている。全国ネットとしてもこの「絆の制度化」について何が担えるのかを検討したい。
第七としてホームレス支援の専門性についてであるが「貧困ビジネス」批判の中で、しばしば取り上げられたのが、料金や施設についてであると同時に「専門家がいない施設」ということだった。
ただ、ここで言われていた専門家とは主に社会福祉士等の有資格者を指していた。果たして「資格」の有無がホームレス支援にとっての「専門性」と単純に言えるか。
ホームレス支援の現場は、その他の福祉等の現場に比べ、まだ歴史が浅く、体系化されていない部分が多い。全国ネットとしては、ホームレス支援とは何であったのかを整理し、それに必要な知識や技術の基準を示し、それを実行できる人材の育成に取り組みたい。先に紹介した「地域生活安定化事業」もこのようなニーズを担っている。専従スタッフのいない団体などに対して、団体のガバナンス向上のための支援も行いたいと思う。
NPO法人 ホームレス支援全国ネットワーク
理事長 奥田知志
NEWS
- 2010.7.20
- 〔入会報告〕NPO法人長崎県地域生活定着支援センター
- 2010.4.1
- 法人化に伴ない年会費・寄付金振込口座が変更になりました。ご確認下さい。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
- 2010.2.1
- 1月18日にNPO法人認証がおりました。登記の手続きが終わり次第、「特定非営利活動法人 ホームレス支援全国ネットワーク」になります。今後ともホームレス支援全国ネットワークを宜しくお願い致します。
- 2009.12.15
- 2010年1月中にNPO認証がおりる予定です。それに伴いホームページもリニューアルしました。